無線USBハブに近い仕組みはありますが、家庭では目的に合ったワイヤレス機器やネットワーク共有を選ぶほうが現実的です。
この記事では、現在利用できる仕組みや注意点、目的別の代替手段を整理します。
無線USBハブはある?現在の主な選択肢
無線USBハブに近い機器や技術は存在しますが、すべてのUSB機器を簡単に無線化できる万能なハブではありません。
一般的な有線USBハブは、パソコンのUSB端子へケーブルで接続し、1つの端子を複数へ増やす機器です。
一方、無線USBハブに近い仕組みでは、USB機器を中継装置へ接続し、中継装置とパソコンの間を無線LANや有線LANなどのネットワークで結びます。
無線になるのは、主にパソコンと中継装置の間です。
USB機器と中継装置の間にはUSBケーブルが残り、中継装置を動かすための電源も必要になります。
そのため、「USB機器からパソコンまでのすべての配線がなくなる機器」ではなく、USB機器をパソコンから離れた場所に置く仕組みと考えると分かりやすいでしょう。
現在の主な選択肢は、次の3つです。
- USB機器をネットワーク経由で扱う中継装置
- 別のパソコンを中継役にする仕組み
- USB機器の用途をファイル共有やワイヤレス機器へ置き換える方法
どれを選ぶべきかは、使いたい機器と無線化の目的によって変わります。
過去にはWireless USBという仕組みもあった
過去には、USB接続を無線化するための「Wireless USB」と呼ばれる仕組みもありました。
専用の受信機やハブを使い、パソコンとUSB機器の間を無線通信で接続する方式です。
ただし、対応する機器やパソコン環境が限られ、専用ソフトや中継側の電源も必要でした。
USB機器には、入力機器、ストレージ、映像機器、音声機器など、さまざまな種類があります。
それぞれ必要な通信量や反応速度が異なるため、1つの無線方式ですべてを安定して扱うのは簡単ではありません。
現在、家庭でUSB機器を離れた場所から使う場合は、用途に応じてネットワーク共有やUSBデバイスサーバーなどを選ぶ方法が現実的です。
現在の無線USBハブに近い仕組みとは?

現在、無線USBハブに近い用途で使われるのは、USB機器をネットワークへ接続する仕組みです。
代表的なものとして、USBデバイスサーバーやUSB over IPがあります。
USB機器を中継装置や別のパソコンへ接続し、その通信をネットワーク経由で利用するパソコンへ届けます。
基本的な流れは次のとおりです。
- USB機器を中継装置へ接続する
- 中継装置を家庭内や職場のネットワークへ接続する
- 利用するパソコンへ必要なソフトを設定する
- ネットワーク上で利用したいUSB機器を選択する
- USB機器との通信をネットワーク経由で送受信する
パソコン側では、離れた場所にあるUSB機器が、近くのUSB端子へ接続されているように認識される場合があります。
ただし、USBの信号をそのまま空中へ飛ばしているわけではありません。
USB機器との通信をネットワークで送れるデータへ変換し、利用するパソコン側でUSB機器として扱えるようにしています。
USBデバイスサーバーや専用ソフトは現在も提供されており、USB機器をネットワーク経由で利用できる構成があります。
この変換処理とネットワーク通信が入るため、USBケーブルで直接接続した場合と比べて、反応の遅れや転送速度の低下が生じる可能性があります。
USB over IPとファイル共有は同じではない
USB over IPは、USB機器の通信をネットワーク経由で別の環境へ届ける仕組みです。
用途によっては、Windowsへ接続したUSB機器を、同じパソコン上の別の動作環境から利用するためにUSB/IPが使われる例もあります。
ただし、一般的なパソコン同士でUSB機器を共有する機能が、すべての環境に標準で用意されているわけではありません。
一方、共有フォルダーは、USB機器そのものを別のパソコンへ接続する仕組みではありません。
外付けストレージを例にすると、違いが分かりやすくなります。
USB over IPでは、離れた場所にある外付けストレージを、利用するパソコンへUSB接続した機器のように認識させることを目指します。
ファイル共有では、ネットワーク上に公開されたフォルダーを開き、その中の写真や文書を読み書きします。
写真や文書を複数の端末で共有したいだけなら、共有フォルダーのほうが構成を簡単にしやすいでしょう。
USB機器専用の管理ソフトを使う場合や、機器そのものをUSB接続として認識させる必要がある場合は、USB over IPやUSBデバイスサーバーが候補になります。
無線化しても中継側の電源は必要
パソコンとUSB機器の間を無線化しても、中継装置やUSB機器を動かすための電力は必要です。
USBケーブルには、データを送るだけでなく、接続機器へ電力を供給する役割もあります。
通常の有線USBハブでは、パソコンのUSB端子からハブへ電力を送れる場合があります。
しかし、パソコンとハブの間を無線通信へ置き換えると、無線でデータを送れても、同じ方法で電力までは送れません。
中継側では、構成に応じて次のような電源が必要になります。
- ACアダプター
- USB充電器
- モバイルバッテリー
- 電源が入った別のパソコン
- 充電式またはバッテリー駆動の中継装置
たとえば、有線キーボードと有線マウスをソファの近くで使うために、USBハブを無線化するとします。
キーボードとマウスからハブまでのケーブルは残り、ハブをネットワークへ接続する中継装置と、その装置を動かす電源も必要になることがあります。
この構成では、パソコンまで伸びていた長いUSBケーブルを減らせても、手元の配線が完全になくなるわけではありません。
机の上をすっきりさせることが目的なら、USBハブ全体を無線化するより、キーボードやマウス自体をワイヤレス対応へ置き換えたほうが、機器や配線を減らしやすいでしょう。
無線USBハブを使う前に知っておきたい注意点
無線USBハブに近い仕組みは便利ですが、有線USBハブと同じ感覚では使えません。
特に確認したいのは、対応機器、通信の安定性、同時利用、ソフトの対応状況です。
USB端子があっても対応するとは限らない
USB端子へ接続できる機器であっても、ネットワーク経由で正常に利用できるとは限りません。
対応可否は、中継装置、利用するソフト、パソコン環境、USB機器の組み合わせによって異なります。
確認を慎重にしたい機器には、次のようなものがあります。
- 映像を連続して送る機器
- 音声を入出力する機器
- 素早い反応が必要な入力機器
- 大容量データを扱う外付けストレージ
- 専用ソフトと連動する読み取り機器
- 接続状態を維持し続ける必要がある機器
これらが一律に使えないわけではありません。
対応している製品もありますが、機能の一部に制限が生じたり、特定の接続方法だけに対応していたりすることがあります。
「USB機器対応」という説明だけで判断せず、接続予定の機器が対応対象に含まれているかを確認することが大切です。
通信速度はネットワーク環境に左右される
USB機器と中継装置が高速な通信に対応していても、家庭内ネットワークが遅ければ、実際の転送速度はネットワーク側に制限されます。
無線通信では、次のような条件でも速度や安定性が変わります。
- パソコンと無線機器の距離
- 壁や家具などの障害物
- 周囲で使用されている無線機器
- 同じネットワークを利用する端末の数
- 中継装置やパソコンの処理状況
- USB通信を変換するソフトの動作状況
小さな文書ファイルをときどき開く程度なら、速度差が気にならない場合もあります。
一方、容量の大きなデータを頻繁に移動する用途では、直接USB接続した場合より待ち時間が長くなる可能性があります。
通信が途中で切れると困るデータ保存や更新作業では、安定した有線接続を優先したほうが扱いやすいでしょう。
キーボードやマウスでは遅れが生じる場合がある
キーボードやマウスが送るデータ量は多くありませんが、操作情報をネットワーク用に変換して送るため、直接接続より処理が増えます。
文書作成や一般的なパソコン操作では、違いを感じにくい場合があります。
しかし、細かな操作や素早い反応を求める用途では、入力の遅れや一時的な途切れが気になる可能性があります。
キーボードやマウスだけを無線化したいなら、機器自体がワイヤレス通信に対応したものを選ぶほうが、構成を簡単にできます。
USBハブ、中継装置、専用ソフトを追加せずに済むため、接続トラブルが起きたときも原因を切り分けやすくなります。
複数のパソコンから同時に使えるとは限らない
ネットワーク上にあるUSB機器が複数のパソコンから見えていても、複数台が同時に利用できるとは限りません。
USB機器の多くは、基本的に1台のパソコンと接続して使用します。
利用するパソコンを切り替えるときは、前のパソコン側で接続を解除してから、次のパソコン側で接続する方式もあります。
家族や複数人で共有する場合は、次の点を確認しておきましょう。
- 同時に利用できるパソコンの台数
- 利用者を切り替える方法
- 使用中の機器をほかの人が選択した場合の動作
- 接続を解除し忘れた場合の対処方法
- パソコンを再起動したあとの再接続方法
複数人で同じファイルを見ることが目的なら、USB機器の遠隔接続より、共有フォルダーを利用したほうが扱いやすい場合があります。
専用ソフトの提供状況も確認する
USBデバイスサーバーなどを利用するには、パソコンへ専用ソフトやドライバーを設定する場合があります。
使用しているパソコン環境に対応していなければ、中継装置とUSB機器を接続できても利用できません。
パソコンの環境を更新したあとに、古い専用ソフトが動作しなくなる可能性もあります。
長く使う予定なら、現在の対応状況だけでなく、ソフトの更新やサポートが続いているかも確認したいところです。
ネットワーク上のUSB機器を利用できる環境が限定される場合もあるため、購入前に対応条件を確認することが欠かせません。
USBハブを無線にしたいときの目的別代替手段
無線USBハブを探す前に、何を解決したいのかを整理すると、自分に合う方法を選びやすくなります。
目的別の第一候補は、次のとおりです。
| やりたいこと | 第一候補 | 向きにくいケース |
|---|---|---|
| キーボードやマウスのケーブルを減らしたい | 機器自体をワイヤレス化する | 現在の有線機器をそのまま使いたい場合 |
| パソコン背面のUSB端子を机上へ移したい | ケーブルの長い有線USBハブ | パソコンから大きく離れた場所で使う場合 |
| 写真や文書を複数端末で共有したい | ネットワーク上の共有フォルダー | USB機器専用ソフトを使う場合 |
| 離れたUSB機器をパソコンから操作したい | USBデバイスサーバー | 対応機器を確認できない場合 |
| 複数のパソコンで同じ周辺機器を使いたい | ネットワーク共有または中継装置 | 複数台から同時に使いたい場合 |
| 大容量データを頻繁に移動したい | 直接接続または有線ネットワーク | 無線環境が不安定な場合 |
| 特殊なUSB機器を遠隔利用したい | 対応を確認できる中継装置 | 専用ソフトの対応環境が分からない場合 |

配線を減らしたいなら機器自体をワイヤレス化する
キーボードやマウスのケーブルを減らしたい場合は、機器自体をワイヤレス対応へ置き換える方法が分かりやすいでしょう。
USBハブを無線化する構成では、中継装置、電源、専用ソフトなどが増える可能性があります。
入力機器自体がワイヤレス通信に対応していれば、必要な機器を少なくできます。
ただし、電池交換や充電が必要になるため、使用時間や充電方法も確認しておきましょう。
USB端子を手元へ移したいなら有線USBハブを使う
机の下にあるパソコンのUSB端子を、机上へ移動したいだけなら、無線化する必要はないかもしれません。
ケーブルの長い有線USBハブを使えば、ネットワーク設定や専用ソフトを追加せずに、USB端子の位置を移動できます。
パソコンから机の上までのような比較的短い距離なら、無線通信の状態に左右されにくい有線接続のほうが使いやすいでしょう。
ただし、ケーブルを長くすれば、どのような機器でも問題なく使えるとは限りません。
長い距離で利用するときや、消費電力の大きなUSB機器を接続するときは、接続可能な距離や中継側の電源を確認する必要があります。
ファイル共有ならネットワーク共有を選ぶ
写真、動画、文書などを複数のパソコンで共有したいだけなら、USB機器そのものを遠隔接続する必要はありません。
ネットワーク上に共有フォルダーを用意すれば、複数の端末から同じデータへアクセスできます。
USB機器を1台ずつ接続状態へ切り替える必要がなく、家族や複数人で利用しやすい点も特徴です。
一方、USB機器専用の管理ソフトを使う用途や、USB接続として認識させる必要がある用途には向きません。
「USB機器を使いたい」のか、「USB機器の中にあるファイルを開きたい」のかを分けて考えると、必要な方法が見えやすくなります。
置き換えにくいUSB機器には中継装置を検討する
USBデバイスサーバーが候補になるのは、ほかの方法へ置き換えにくいUSB機器を、離れた場所から使いたい場合です。
たとえば、USB接続だけに対応した機器や、特定のソフトからUSB機器として認識させる必要がある場合が当てはまります。
ただし、USB端子の数だけを見て選ぶのは避けたほうがよいでしょう。
購入前には、少なくとも次の項目を確認する必要があります。
- 接続したいUSB機器へ対応しているか
- 使用するパソコン環境へ対応しているか
- 必要な専用ソフトが提供されているか
- 無線LAN接続に対応しているか
- 有線LAN接続が必要か
- 複数台から利用する場合の切り替え方法
- 中継装置に必要な電源
- 映像や音声を扱う機器への対応状況
- 通信が切れた場合に作業へ影響しないか
USBデバイスサーバーには、無線ネットワークへ接続できるものと、有線ネットワークを前提とするものがあります。
「ネットワーク対応」と書かれていても、無線で接続できるとは限らないため、接続方法を分けて確認しましょう。
無線USBハブが一般的になりにくい理由
無線USBハブが有線USBハブほど一般的ではない理由は、USB機器ごとに適した無線化の方法が異なるためです。
キーボードやマウスは、機器自体をワイヤレス化できます。
写真や文書の共有には、ネットワーク上の共有フォルダーを利用できます。
パソコン背面のUSB端子を手元へ移すだけなら、有線USBハブで対応できます。
映像、音声、大容量データ、素早い入力などを扱うUSB機器では、必要な通信速度や安定性も異なります。
すべてのUSB機器を1台の無線ハブで扱おうとすると、対応機器、通信の遅れ、電源、専用ソフト、ネットワーク設定など、確認項目が増えてしまいます。
結果として、USB接続を丸ごと無線化するより、入力機器はワイヤレス機器、ファイルはネットワーク共有、特殊なUSB機器だけ中継装置を使うという役割分担のほうが、家庭では使いやすくなります。
「無線USBハブ」という名称の製品を探し続けるより、解決したい悩みから方法を選ぶことが大切です。
無線USBハブを探す前に整理したい3つのこと
無線USBハブが必要かどうかは、使いたい機器と目的によって変わります。
最初に、次の3つを整理しましょう。
- どのUSB機器を使いたいのか
- パソコンからどのくらい離して使いたいのか
- 配線を減らしたいのか、複数端末で共有したいのか
机の上からキーボードやマウスのケーブルを減らしたいなら、機器自体のワイヤレス化が候補です。
パソコン背面のUSB端子を机上へ移したいなら、ケーブルの長い有線USBハブが使いやすいでしょう。
写真や文書を複数の端末で開きたいなら、ネットワーク上のファイル共有が目的に合います。
置き換えにくいUSB機器を離れた場所から利用したい場合に限って、USBデバイスサーバーを検討すると、必要以上に構成を複雑にせずに済みます。
まとめ
無線USBハブに近い仕組みはありますが、ケーブルや中継側の電源までなくなるわけではありません。
配線を減らすならワイヤレス機器、ファイル共有ならネットワーク共有、USB端子を手元へ移すなら有線USBハブなど、目的に合った方法を選びましょう。

